映像メディア・マネジメントに関心の高い、スタッフSさんから紹介を受け、この「映画館との新しい出逢いを体験できるお祭り」に行ってみました。 KINOHAUSUの「KINO=映画」と、英語の接頭辞「CON=ともに・一緒に」から生まれたイベント<キノコン>は、タイトル通り今までにない映画・映像体験ができ、新しい何かと何かがきっと繋がるような、そんな体験が待っている催しなのだそうです。 まずは<キノ×コンセント>と称された、アートシーン風の<映像インスタレーション空間>に足を運びます。 コンクリートの大壁や、額縁、鳥かごの中、はたまた覗き穴の向こう側・・・ 大小様々なサイズのモニターでレイアウトされた会場は、九里洋二氏のアートアニメーションが延々と上映されていて、さしずめ<映像実験ラボ>といった趣きです。 しかしアニメの作風がレトロポップなせいか、<インスタレーション空間>といっても小難しくアートアートしてなく、お茶やお菓子を楽しみながらリラックスして観賞できます。 ここは言葉や世代を超えて人と人とをつなぐ実験の場なのだそうで、赤ちゃん連れのお母さんなども気楽に観に来てました。 なぜだか久里洋二氏のイラスト刻印入り大福あんぱんが販売されてるのが、またなんとも可愛らしい。 ちなみに大福あんぱんとは、あんぱんの中からまんまと大福が現われる、遊び心満載のチャーミングかつ美味しいものでした。 映像芸術と大福あんぱんのコラボレーション・・・ 私にはこれもかなり実験的に映りました。 その他、<映画女子会のすすめ>という昭和30~40年の日本映画の上映会&講座や、<映画合コン><映画一箱古本市>など、映画好きにはちょっとそそられるユニークな催しが用意されていて「へぇ〜イマドキの映画館って何だか面白いんだなぁ」っていう印象です。 中でも私が一番興味を引かれたのは、飛び出す絵本を使って映像投影したミニチュアシアター<The Ice Book>でした。 プロジェクションマッピング(映像投影)というのは、舞台スクリーンや大きな建造物などに映すものだとばかり思っていたので、その逆を見事に突かれて「やられた!」って感じです。 一枚一枚手で切り出した精巧な切り絵。 それを真っ白なポップアップブック(飛び出す絵本)に仕立て、その絵本の舞台に映像を映し、英国人アーティストのデイビー&クリスティン=マグワイア夫妻が、紙芝居の様に本のページをめくって、物語を見せて行く。 小さな絵本の中の小さな舞台を観賞するので、芝居小屋の中に入れるのは一回につき10名程度。 隣の人と肩を寄せ合い、息をひそめ、ワクワクしながら絵本を覗き込みます。 チラシには「かつて人が見世物小屋で初めて映画に出逢った時のような親密な時間を味わえるはずです」と書いてあったが、本当にそんな感じ。 私の子供時代は、自転車に乗った紙芝居のおじさんがまだ存在していて、公園や広場で子供達の人気をさらっていたが、その時のワクワク感を彷彿させるものがあるのです。 物語は氷の国のおとぎ話し。 静かなモノクロームのサイレント作品で、セリフもなく、芝居はマイムやダンスで表現します。 静謐なピアノのBGMに乗り、19世紀風の衣装をまとったミステリアスな氷の貴婦人が登場すると、その小さな幻想の世界に、知らず知らず誘い込まれてしまいます。 飛び出す絵本が語りかける、飛び出す紙芝居ドラマ。 顕微鏡で覗くと雪の結晶の中に完璧な美を発見できるように、小さな絵本の中に繊細で儚い夢の世界が存在し、驚きと共にその世界の運行を見守る証人になってしまうのです。 これは「ノスタルジックな錬金術だ」と、私は思いました。 魔術師が操る魔法に見え隠れする真実。 パーティー後のけだるい眠気。 どこかで置き去りにして来てしまったような感情。 甘酸っぱかったようなもどかしい匂い。 膨大なノスタルジアの記憶庫を、ふとした弾みに垣間見てしまったような、そんな真冬の午後でした。 キノコン リンク先<キノ×コントラスト>にて<The Ice Book>動画掲載
by viva1213yumiko
| 2013-01-21 19:34
| オペラ・バレエ・映画
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