まわってお日さん 呼んでこい 鳥 虫 けもの 草 木 花 春 夏 秋 冬 連れてこい 咲いて 実って 散ったとて 生まれて 育って 死んだとて 風が吹き 雨がふり 水車まわり せんぐり いのちがよみがえる ♬ 穢れなき永遠の世界で、天の享楽を楽しむ天上人にとって、このわらべ唄はきっと忌むべき唄に違いありません。 人間界での生き生きとした暮らしを思い起こさせる、この唄を聞いたばかりに、かぐや姫は地球に恋い焦がれるという罪をおかしてしまうのですから・・・ いのち輝く地球は、とても美しく素晴らしい世界です。 しかしそれは同時に、罰としてたくさんの辛い出来事を受け入れなければならない事を意味していました。 アニメ映画<かぐや姫の物語>は、仏教思想・輪廻転生思想にスポットを当てています。 一切の煩悩から解放され涅槃の世界へ至るためには、人は何度も何度も生と死とを繰り返さねばならない。 我々はいつまで経っても愚かなままで、人を傷つけ自分を傷つけ、過ちばかりを繰り返している。 光をひとつ手にするたびに、ひとつ何かを諦めねばならなくて・・・ とかくこの世は生きにくいものです。 果たしてこの世は本当に生きるに値するものなのでしょうか? 古典文学の<竹取物語>ではイマイチはっきりしないところが、この映画では明らかにされてます。 不老不死で極楽浄土の月世界から見たら、地球は穢れた<ケガレチ>です。 人間の<情>は暖かく素晴らしいものだが、それは同時に<業>でもあり、これが存在するために我々はいつも苦しめられてしまう。 かぐや姫だって愛する父母の望みとあらば、楽しい田舎暮らしを捨て、自分の本当の生き方を諦めもする。 しかし貴族文化への抵抗、育ての親とのすれ違い、言い寄る男たちへの反発。 姫の苦悩と葛藤は徐々に大きくなってしまうのです。 <ケガレチ>の人間界へ行く事を望んだのは彼女自身です。 けれど彼女は思ったよりもずっと思い罪を背負う事となってしまいました。 これって決して物語の中だけのお話しではありませんよね。 私たち誰もがかぐや姫とおんなじ思いを持っています。 これは人類共通の普遍のテーマです。 地球に憧れて生を受ける事=原罪 地球での人生を全うする事=罰責 キリスト教でも同じような事を言ってましたよね。 孤高のかぐや姫は、ミカドの強引な誘惑に対しても死を覚悟に突っぱねる。 本当の自分の生を生きる事と、恩義ある親への情愛との板挟み。 かぐや姫の背負った業は重くのしかかります。 姫のストレスは限界に達し、もう清浄無垢な月世界への帰還しか、彼女の魂の救済方法はなくなってしまうのです。 「さあ、この羽衣を着てこの世の穢れを清めるのです」 十五夜の日、月から迎えに来た使者は癒しの言葉をかけてくれました。 それなのに羽衣を被せられる瞬間、かぐや姫は叫んでしまいます。 「この世は穢れてなんかいないわ!みんな彩りにみちて、人の情けを・・・」 言葉はそのまま途切れて無表情になり、彼女は使者たちと共に雲に乗り、月へと帰って行きます。 結局、かぐや姫はもうひとつの生き方(捨丸兄さんと一緒に里山でイキイキと生きる事)を夢見つつ、それを実際に生きる事なく月に帰ってしまいました。 地球には様々な愛があります。 いい事ばかりじゃない。 時には人に裏切られたり騙されたりしたりもする。 「それでも絶対、穢れてなんかないのよ!」 かぐや姫はそう言いたかったに違いありません。 かぐや姫の輪廻の物語。 それは地球に生を受けたにも関わらず、生を輝かす事が出来ないでいる私たちの物語でもあります。 我々はそれぞれの<いのちの記憶>を頼りに、この場所に降り立ち、輝きを求め彷徨っています。 地球を体験した異星人かぐや姫は、いのち溢れる地球の豊かさ、人間の愛憎、善良さ、愚かさを、今も我々に教えているのです。 ♬ いまのすべては 過去のすべて 必ず逢える あの懐かしい場所で いまのすべては 未来の希望 必ず憶えてる いのちの記憶で ♬ 主題歌 いのちの記憶 追伸 アニメ<かぐや姫の物語>は、動く水彩画ともいえる一級の芸術作品でした。 横山大観みたいな日本画だったり、雪舟みたいな水墨画だったり、鳥獣戯画の絵巻物みたいだったりする。 日本美術の粋を集めた余白の多い作画法で、デイズニーには絶対に真似出来ない芸当です。 海外のアニメーターたちは、さぞかし嫉妬するんじゃないでしょうか?
by viva1213yumiko
| 2013-12-15 22:35
| オペラ・バレエ・映画
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