B級映画の楽しみ

訳もなくB級映画が恋しくなる事があります。

スペクタル巨編であってはならない。

ハートウォーミングストーリーでもいけない。

素晴らしい映像美もいらない。

心理劇もだめ。

あくまでもB級のお気楽な映画がフィットする。

そんな気分の時があるのです。


用事の出先で大幅に時間が余ってしまいました。

時は水曜レデイースデイ。

笑える映画で気晴らしして、次の予定に備えようと<テルマエ・ロマエ>を選びました。

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ヤマザキマリの同名人気コミックの映画化で、古代ローマの風呂設計技師が日本にタイムスリップして、風呂文化の新しいアイデアを得、それを次々と披露し成功するという、馬鹿馬鹿しくもユニークな着想のコメディであります。


主人公のローマ風呂の設計士ルシウスは、タイムスリップした日本の銭湯をどこかの属国と勘違いし、銭湯の客を<平たい顔の奴隷達>とさげすみます。

しかし、見事な富士山の壁画技術や贅沢な一枚板の鏡、ケロリンと書かれた発色の良い新素材の桶を発見し、また脱衣所のかごや扇風機や番台システムを知り、<平たい顔族>の風呂文化に驚き感心する。


極めつけはフルーツ牛乳です。

牛の乳に南方の甘い果実の風味を加えた、この世のものとは思えぬ程冷たく美味なる飲み物に感動したルシウスは、その高度な文明に驚愕し「恐るべし平たい顔族・・・」とつぶやく。

そして、それら全てのアイデアをまねた公衆浴場を設計し、ローマ市民から絶大な賞賛を浴びるのです。


阿部寛扮する主人公ルシウス以外にも、古代ローマの偉人達をやけに濃いめの顔立ちの日本人俳優でキャスティングし、<平たい顔族>との違いが強調されて、何だか意味もなくただ笑えます。


ところでこの映画の中で、上戸彩扮する女性漫画家の実家(古い温泉宿)が登場するのですが、そのロケ地はなんと、那須岳の北にある秘湯<北湯温泉>だったのですよ。

温泉通のあいだでは、天狗の面の混浴と屋外の巨大な温泉プールで知られる、山の一軒宿<北湯温泉>なのです。

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忘れもしない、那須にご縁ができた最初の正月。

雪の降りしきる寒い日。

駐車場脇にある滑り止め用の荒縄を靴に巻きつけ坂を下り、噂に聞いていたこの温泉を初めて訪れ、私はルシウス並みのショックを受けました。

開湯1200年、元禄年間創業のこの湯治場は、昭和、明治、江戸安政期の宿泊施設からなり、ひなびた感を通り越して完全にタイムスリップ、まさに異次元空間だったんです。

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各時代ごとに増築が繰り返された迷路みたいな廊下は、おとぎ話の妖怪が登場しそう。

圧倒的な湯量の温泉があちこちから沸いていて、プールが出来るほど。

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脱衣所に目隠しさえないような混浴が、いまだにあるってことにもびっくりした。

しかしさらに驚いたのは、この山奥で自炊しながら正月を過ごしている常連客がいたことなのです。

酒や食料を持ち込み、宿のどてらを着込み、温泉→お酒→こたつ→うたた寝→温泉→お酒→こたつ→うたた寝を繰り返すのだそうです。

俗世を離れた山の湯治場で、[なにもしない]をする甘美な正月。

雪景色の時空を超えた異空間。

最高にイカした<平たい顔族>に出逢えたのは、ルシウスだけじゃなくこの私もだったんですね。


このような忘れられない心象風景が、映画のロケ地となり、思いがけず突然スクリーンに大写しになって飛び込んで来たという訳。

[プチ感動] とでもいいましょうか・・・

私はもう、心の中でひとりはしゃいでしまいましたよ。

古代ローマと、レトロ日本と、あの雪の正月の原風景とが同一線上に急に繋がり、突然意味を持って輝き始め他のです。


さほど期待もしなかった映画から、思いもかけずこんなギフトを手にする幸せ。

B級映画ってこれだから好きなんです。



北湯温泉




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by viva1213yumiko | 2012-06-15 20:48 | オペラ・バレエ・映画 | Comments(0)
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