お盆の頃は怪談話しをするのに絶好のシーズン。 子供時代は夏合宿の消灯後に、必ず布団で怖い話しをしたものだ。 クラスに必ず一人ぐらい、怪談話しの上手い子がいて、その子はちょっとしたスターになれる。 「開かずの扉のあの話し、また聞かせてよ~」 なんてせがまれたりされるのだ。 話しを初めて聞く子を最大限怖がらせるために、にわかサポーターが演出効果を盛り上げたりする。 思えば無邪気な夏を過ごしていたものだが、今振り返るとそういった子供時代の何気ない記憶が、人格形成に意外と大きな影響を与えているのだと実感する。 人は大人になると怪談話しなどに興じなくなるが、それは一体なぜなのだろう? 大人は一文の得にもならない、くっだらない幽霊話しなんかより、物事を効率良く進める実用的な話しを好む。 それもまぁ、そうなのだろう。 24時間電気の灯る現代社会では、<丑三つ時>になっても幽霊の出番はない。 不自然極まる深夜の街に、不自然極まる人間たちが溢れかえってる。 むしろ幽霊の方が恐れをなして引きこもってしまうのだろう。 「うらめしや~」なんて、もう完全に死語なのかもねぇ。(笑) そんな風に思ってた矢先。 読んでた本に少しクールでアダルトな幽霊話しが出て来たのです。 「悪魔とか幽霊とかその他の霊力の技による、精神支配とその異常な精神状態について」の実話だけど・・・ どうです? 少しは涼しくなれそうじゃないですか? 20世紀を牽引した高名な哲学者であり、著述家で教育者で、ヨギーでもあったジッドゥ・クリシュナムルティ(1895~1986) 彼が食事の席でゲストに語った怪談話し。 今回はこの怖~い実話を紹介してみましょう。 それはクリシュナムルティがロンドンに逗留していた時の話し。 ある午後、彼が窓の外を眺めていると、一台のロールスロイスがやって来ました。 運転手が降りてドアを開けると、中から化粧して優雅に装った貴婦人が現れたのです。 彼女はドアベルを鳴らし、自己紹介をし、クリシュナムルティと私的な会話が出来るか?と訪ねました。 どうやら緊急を要する事柄のようでした。 部屋に招き入れると、彼女は単刀直入に「自分は成功したコールガールだ」と打ち明けました。 彼女は最高の社会的立場にある人々(貴族・政治家・実業家など)何百人もの男性と性的交渉を持ち、巨万の富を作っていた。 しかし彼女が誰よりも愛していた愛人中の愛人は、半年前に死亡してしまいました。 こういった全てのことを事実のまま、大変冷静に彼女は話してくれたのです。 そして炎を見つめながら、軽い気持ちで死んだ恋人の霊魂を心の中で呼び出してみたのです。 すると驚いたことに幽霊が、以前の恋人のまま姿を現わしました。 彼女は「その幽霊とセックスをした」と、クリシュナムルティに告白しました。 そのことは彼女をすっかり興奮させ、楽しませました。 そしてその次の夜から、彼女が一人で過ごしていると、いつも決まって同じことが起こるようになったのです。 同じ状態が何ヶ月も続きました。 すると幽霊はだんだん強力になって、彼女を支配し始めました。 彼女にしなくてはならないことを告げ、その欲望はさらに激しさを増し、次に会う時間を指定し「ああしろこうしろ」と言って来るようになった。 彼女は幽霊に取り憑かれ、生活さえも支配されるようになってしまいました。 なので彼女はすべての事柄をもう終わらせようと決心したのですが、良い方法が見つかりません。 このことを心理学者や司祭や、その他のプロには相談したくなかった。 そこで友人に「解決方法を知る信頼のおける人物を知らないか?」と尋ね、クリシュナムルティの名前が浮かびあがって来たのです。 講話を1~2回聴いて彼女は、この人ならこの奇妙な苦境から救ってくれそうだと確信しました。 このとんでもない経験についてはまだ誰にも話していませんでした。 クリシュナムルティが相談を受けた最初の人だった。 彼女は目に涙を一杯にして、この話を彼に打ち明けました。 クリシュナムルティはアドバイスを正確に守るという条件で、彼女を助けることに同意しました。 クリシュナムルティは彼女に、はめてる指輪の1つを外し,、三日後に返すまでここに置いて行くよう言いました。 その三日間は「セックスしないこと」「夜間は幽霊が彼女に近づけないよう一人で家にいないこと」を約束させました。 クリシュナムルティは彼女のダイヤの指輪を暖炉の上のマントルビースに乗せて置いた。 指輪は三日間そこに置かれ、誰もそれには触れることはありませんでした。 三日後、彼女はロールスロイスでやって来ました。 クリシュナムルティは彼女に指輪を返し、ずっとそれをはめているように言い、今まで通りの生活を始めて何が起こるか観察していなさいと言った。 一週間後、彼女は喜び勇んで再び訪れました。 幽霊はすっかり追い払われたのです。 夜にたった一人で炎の前にいる時でも、幽霊はもう姿を現さなくなりました。 幽霊は二度と現れないだろうと、彼女はクリシュナムルティに深く感謝の辞を述べました。 数ヶ月後、クリシュナムルティがレストランで友人と食事をしていると、偶然そこに居合わせた彼女が別のテーブル越しに会釈をして来ました。 ちょっとの間一人になった時、彼女は急いでやって来て、クリシュナムルティに「重大なことを話したい」と言いました。 そしてこの前のお礼を繰り返した後、話しを進めました。 その後時間が経つにつれ、彼女はすっかり毎日が空虚で寂しくなってしまい、1ヶ月ほど前にまた戯れに幽霊を呼び出してしまったのだそうです。 そして今ではすっかり元の木阿弥になってしまったと言うのです。 <おしまい> この話に結末はないのです。 結局彼女は元の状態に戻った。 本来の自然な状態に戻って行っただけだった。 でもこの話し、私たちの日頃の問題と良く似てると思いませんか? 私たちは皆んな「自分を変えたい」「もっと良くなりたい」「葛藤をなくしたい」って要求する。 そして神仏に祈願し、救いを求めたりもする。 しかし自分の方の努力なしで、魔法の力にすがっただけで、果たして完璧な人間になれるんだろうか? 仮に一時的に完璧になったとしても、その後にどんなことが起こるか大体想像がつきます。 結局私たちの自我は、古くて住み慣れた場所が一番好きなのです。 一時的な変容を遂げたとしても、最終的には馴染みある記憶の元へ大多数の人が帰って行く。 表面的ではない方の記憶、潜在的な記憶の方に、知らないうちに導かれてしまうのです。 「そして彼女はその後どうなったんですか?」 という質問にクリシュナムルティーはこう答えました。 「いや、別に何も・・・以前と同じなのではないかと思うよ」 この怪談には結末もなければオチもありません。 人は誰でも自分の心を、目に見えない鎖で縛ったままの状態なんです。 そして馴染んで居心地の良いその状態に、知らず知らず執着している。 そして何よりも恐ろしいのは、誰もそれが執着だと気づいていないこと。 一番恐いお話しは、人間の心の中にあったんですね。 業務連絡:HPはこちらから
by viva1213yumiko
| 2019-08-14 12:05
| 季節・行事
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