<   2018年 05月 ( 1 )   > この月の画像一覧

世界で最も哀しいお告げ


この世には悲劇と呼ばれるものが存在してます。


戦争や災害などが起こるたび、そこにはたくさんの悲劇が生まれます。


トロイア戦争の叙事詩<イリアス>、ロシアの歴史大河小説<戦争と平和>、日本の軍記<平家物語>など、物語は実際の史実を超え語り継がれて行きます。


さらにもっと個人的な悲劇なら・・・例えば<ハムレット>は?


登場人物が次々と死んでしまう哀しい復讐劇です。


男女の恋の悲劇なら、やっぱり<ロミオとジュリエット>?


いずれにせよ、どれもが皆んな最終的に<死>で幕を閉じる。


悲劇ってどうにもやるせないものですね。


だけどこの中のどんな悲劇だって、オイディプス王の味わった哀しみに比べれば、所詮はスケールちっちゃい感じです。


なぜでしょう?


それはこうだからです。


本当の悲劇とは、厳しい<業>を引き受け人生を生き続けなければならない、その哀しみそのもののことだから。


ギリシャ悲劇の最高傑作、<オイディプス王>の物語。


この世で最も救いのない悲劇に見舞われた王様のお話しです。


それでも王は<死>に逃げ込まなかった。


<業>を引き受けそのまま生きることを決意するのです。



「いずれ父を殺し、母と交わるであろう」


というアポロンの神託を聞き、親殺しの罪を犯さぬよう国を去ったオイディプス。


しかし旅先の小さな諍いから、名も知らぬまま実の父親を殺してしまいます。


そして王を亡くして未亡人となった実の母を、そうとは知らずに娶ってしまう。


呪われた運命から逃れたはずが、皮肉にもアポロンのお告げを成就させることになってしまった。


オイディプス王は結局、父を殺し、母と交わる。


そして4人の子を設けるのだった。


ところが国中に疫病と凶作が蔓延する。


盲人の預言者に「先王を殺した犯人を見つけ、汚れを払わなければ、この災厄から逃れられない」と告げられ、先王殺しの犯人を探し始める。


しかし捜査するうち出生の秘密が明らかになり「先王殺しの犯人は他ならぬ自分自身だった」と驚愕の事実に気づく。


息子と結婚してしまったことを知った王妃は、絶望し、首を吊って死んだ。


そしてオイディプス王も「これほどの悲劇は見るに耐えない」と、自らの両目を潰し、盲目となって放浪するのです。



物語の教訓はこうでしょうか?


[ 人は自分の宿命から決して逃れられない ]



神託に抵抗する人間の振るまいが、神託の成就にあらかじめ組み込まれていたなんて・・・


恐るべき予言の先読み効果じゃありませんか?


良かれと思って打った先手が、却って地獄を呼んでしまうんだから、これに勝る不幸はありませんよね。


過酷な運命に弄ばれ、予想もしなかった破滅に至る。


<オイディプス王>の物語には、そのような人間の<救われぬ哀しさ>が描かれています。



しかし、オイディプスは偉かった。


絶望に陥っても自死せず、盲人になって追放されても、厳しい生に耐え、生き抜く道を選択する。


過去を探らなければ苦悩することもなかったはずなのに、それでも苦悩を抱え、生きる決意をしている。


立派な<生き様>だと思います。


私たちも皆、多かれ少なかれ何らかの哀しみを引き受け、毎日を生きてるのは確か。


それだからこそ我々も、オイディプスのように潔く、ジタバタもせず、十字架を引き受けて生きる。


そんな生き方こそが理想です。


少しでもそれに近づけるようになりたいものです。


結局自分と折り合いをつけ、哀しみを背負う覚悟の出来た者だけが前進出来る。


それは物語の世界だけじゃないんですね。



しかしそれにしてもオイディプスの運命って過酷です。


このような宿命の星の下に生まれるには、それ相当の、それなりの因子が必要なんでしょうねぇ。


そこら辺から推測しても、彼にはやはり<血の絆>というテーマが大きく関わってると思います。


苦しいことが起こった時、それを「カルマのせい」と考える人は多いでしょ?


カルマって本人の預かり知らぬ場所で予想もしない形で成就したりするから、ホント困っちゃうんですよね。


原因が分からかず「なぜ自分ばかりこんな目に?」と嘆くことになる。


<カルマ論>は奥の深い話しでして・・・ホントに始末に負えないんです。


結局このオイディプス王の場合、近親の血族関係のカルマも大きく影響してるってことなのでしょう。


<ファミリーシークレット>って奴です。


王家の血脈の純粋性も左右してるでしょう。


計り知れない秘密が水面下で発酵し、それが一気に噴出してしまった気がします。


王にお逢いした訳じゃないし(当たり前だ)、詳しいことは分かりませんが、大いなる秘密が深いレベルに隠れてるってことだけは良く分かりますよね。



人は本当に宿命から逃れられないものなのだろうか?


オイディプス王の物語から、姿を見せない真実の不思議なカラクリを思わずにいられません。


ジグソーパズルのピースはちゃんと揃っているのです。


でもいつまでたっても我々には全体像が見えない。


私たちはそんなもどかしさを抱え生きています。



生まれて来る前から決まってるのが<宿命>で、自分の努力次第で切り開けるのが<運命>


江原啓之さんも確かそう言ってました。(笑)


時代や国や人種、親兄弟や親族、性別、体質、容姿、寿命・・・


我々がどんなに強く望んでも、あらかじめ決められている宿命は、降参して受け入れるしかない。


そうするしかないところにも、また哀しさがありますね。



スピリチュアリズムではなぜ自分がこのような宿命の下に生まれたか、考えてみることが大事だと教えます。


それが人生理解を深める第一歩になるというのです。


自分の人生になぜこんなことが起こるのか?


自分の中のどのような問題を解決すべきか?


そこにはどんな課題があるのか?


変えようにも変えられない宿命をまずは受け入れること。


そのプロセスが自分に必要な学びのスタートだって、そう教えるんですね。



「いずれ父を殺し、母と交わるであろう」


オイディプス王が告げられたのは、世界で最も哀しいお告げです。


そしてその宿命を悟った時、王は自らのカルマを背負う覚悟をし、放浪の旅に出た。


大切なのは人生で起こるどのような出来事も、自分を磨く魂磨きの場所だと、そう考えられるかどうかです。


それさえ出来るなら試練も切磋琢磨し乗り越えて行ける。


自分を成長させることが出来るんですね。



「人生には試練はあっても不幸はない」のだそうですよ。


何かの本でそう読みました。


どのような場所からも前へ進むことは可能なんですね。


あなたの宿命をしっかり受け止めましょう。


そして運命の方は、どうぞ大きく切り開いて行って下さいね。




[ それぞれの魂は過去生の勝利によって強化されるか、もしくは欠点によって弱まってこの世に生まれて来る。この世のどこに位置づけられるかは、その人の過去の美徳、あるいは欠点によって決定づけられている ]


オリゲネス・アダマンティウス 初期キリスト教神学者(185頃~254頃)  





[PR]
by viva1213yumiko | 2018-05-11 23:22 | 人生・霊性 | Comments(0)